ようやく回復の兆しが見えてきたスピリッツ業界。異なる戦略をとるペリノ・リカール社とディアジオ社の今後の勝負は?

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IWSR Magazine March 2016

大手各社の2015年後期決算報告書から、スピリッツ業界の約2年間の低迷期からようやく回復の兆しが見えてきたことがわかります。

これを機に更なる成長を目指す各社でありますが、いままで類似した戦略をとっていたペリノ・リカール社とディアジオ社が、異なる戦略を打ち出すなど、いくつか今後に影響をおよぼす動きが起こっております。

  • 各社ともに本業での成長率が概ね上昇
  • 事業費への投資額を拡大、同期の利益は伸びず
  • ペリノ・リカール社とディアジオ社は、これまでの類似した事業戦略が異なる方向で勝負
  • 北米、欧州、アジア、それぞれの市場でも堅調

IWSRがこの財務データを元に2015年後半のスピリッツ業界の動向を分析した結果をご報告いたします。

各社本業での成長が顕著に

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業界大手各社が発表した2015年7-12月期決算報告によると、クリスマス商戦の好調も手伝って、各社売上高の本業での成長率が概ね上昇したことが分かりました。

業界のトップ2、ディアジオ社とペリノ・リカール社は緩やかな成長基調に転じ、またブラウンフォーマン社は近年のバーボン人気にあやかり成長路線を維持。モエヘネシー社は超プレミアム商品の売上が引き続き好調で、同社の主要市場である中国の落ち込みによる影響をほとんど受けることなく前年より大きく売上を伸ばしました。

一方で、レミーコアントロー社は中国市場以外での基盤の弱さが露呈し引き続き低迷しております。

一方で利益率は横ばいに。販売力強化への投資影響か?

profit原料費や燃料費の下落、また各社のコスト意識の高まりという有利なコスト環境に恵まれ、利益率の大幅アップが期待されたが、実際はほぼ横ばいに終わりました。

この背景には、各社の販売力強化のための人件費アップやマーケティングコストの増加があります。例えばディアジオ社は、スペインでの販売員を5人から69人に増員しております。

マーケティングコストにおいては、ペリノ・リカール社がアジアで9%、北米で7%投資額を拡大させ、ディアジオ社も3%増額しております。このように、業界の売上高が概ね増加したにもかかわらず、利益率が大きく上昇しなかった背景には、人件費やマーケティングなどへの投資額の増加があり、競合ひしめくスピリッツ業界で生き抜くため、各社は事業費への投資額を拡大したと分析できます。

ディアジオ社の復活基調がみられる2015年の後半

diageo特筆するべきは、ディアジオ社が復活基調が挙げられます。

スピリッツ業界最大手の同社が発表した2015年前期決算(2014年7-12月期)、2015年後期決算(2015年1-6月期)は主要ブランドが全てマイナス成長あるいは横ばいであったが、最新の2016年前期決算(2015年7-12月期)では、プラスに転じたブランドもあり、緩やかではあるが復活基調に転じた様子がはっきりとわかります。

すなわち、主要ブランドの多くの売上が上昇に転じ、新興国市場での業績も改善したということがわかります。

ペリノ・リカール社とディアジオ社、業界2トップの戦略が初めて違う方向へ

業界を牽引するペリノ・リカール社とディアジオ社は、事業展開する国・地域から商品ライアンアップに至るまで、これまで様々な部分で類似しており、事業戦略も似かよっていました。

しかしながら、その両社が、今回初めて異なる戦略を立てたことは特筆すべきことと言えます。

ディアジオ社は従来の売上(セルイン)主義から実販(セルアウト)主義にシフトすることで、在庫管理やサプライチェーン機能の管理を効率化、商品ラインアップに関しては、新興国市場で安い価格設定の商品の売上増加に力を注ぐという方針を打ち出しました。

ペリノ・リカール社は、高級シャンパンと高級ウイスキーの売上拡大に重点を置く戦略をとります。富裕層にさらに切り込んでいくというこの戦略は元来プレミアムブランドである同社としては理にかなった流れであると言えます。また、eコマースにも力を注ぐ方針です。

ここ数年を振り返っても、業界2トップが異なる事業戦略を掲げるケースは稀であり、今後の勝負の結果がどう出るかとても興味深いところと言えるでしょう。

北米、欧州、アジア、それぞれの市場では?

ブラウンフォーマン社、ディアジオ社、ペリノ・リカール社の本業での業績を北米、欧州、アジア市場の主要な市場ごとに分析した。

byarea北米

  • ブラウンフォーマン社は主要ブランドであるジャックダニエルをはじめとするバーボンカテゴリーにおいて長期間継続的に成長中。
  • ペリノ・リカール社は、前年の成長率横ばい状態から脱出し売上高が3%上昇した。同市場最大の稼ぎ頭ウォッカのAbsolutの売上増と、販売力強化作戦の奏功でコニャックのMartellやウイスキーの売上増が要因。
  • ディアジオ社は在庫調整が響き2%のマイナス成長。

欧州

  • ディアジオ社は欧州全体で3%の増加。国別では、イギリス+3%、アイルランド+5%、フランス+4%、ロシア+20%、トルコ+9%と軒並み売上を伸ばしました。
  • ペリノ・リカール社は1%の成長率に留まったが、2015年のペリノ社とリカール社のバックオフィス統合というタイミングによるフランスでの7%減が響いたため。それ以外は、イギリス、スペイン、ドイツでの売上は好調で、全体的には+1%アップとなり、久しぶりに欧州全体で売上増を見せています。

アジア

  • ペリノ・リカール社は中国での2%の売上減と韓国での販売低迷と免税部門の落ち込みがあったが、アジア全体での売上は7%アップ。国別では、同社の主要市場であるインドでの売上が14%アップ。
  • ディアジオ社も同様に免税部門が低迷したが、中国+4% 、インド+6% 、東南アジア+6% 、北アジア+2%となり、アジア市場全体での売上は2%アップとなりました。

久しぶりの回復基調と今後トップ2社の戦略の違いの勝負は?

先進国市場では新規参入企業の増加により競争が激化し、主要新興国市場では政治・経済状況の不安定性が高まったため、この2年間は特に大手が低迷した。

しかし、販売力強化のための人件費アップやマーケティング費用拡大、そしてマクロ環境の改善に助けられ 、スピリッツ業界に成長率回復の兆しが見えてきた。

しかしながら、ペリノ・リカール社とディアジオ社の業界トップ2社は、株主が期待するレベルの成長基調に乗っていないのが現状であり、今後も事業費の投資を増やし、事業戦略をさらに改良することで、株主が期待する水準での成長率達成を目指さなければならない。

さて、この勝負の行方はいかに?

出典:IWSRマガジン3月号記事「Growth starts to stir」をIWSR Japanにおいて抜粋翻訳、編集してご提供しております。

期間限定:出典オリジナル「Growth starts to stir」記事プレゼント

IWSRマガジンの3月号で「Growth starts to stir」として、業界大手各社が発表した2015年7月から12月までの決算報告書を分析しております。日本語記事では、オリジナルのエッセンスを踏まえ、日本語でもわかりやすく記事としてご提供いたしております。いかがでしたでしょうか?

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