東南アジアのウイスキー消費市場での注目トレンドはシングルモルトとジャパニーズウイスキー

[IWSR Magazine四月号から抜粋編集 アナリスト:José Luis Hermoso]  東南アジアにおける2015年のウイスキーの売上に関して、タイ、ベトナム、インドネシア、シンガポールといった大規模市場は低迷、フィリピン、ミャンマー、ラオス、カンボジアなど小規模な新興市場は大健闘という、入り混じった結果が出た。

whiskeyconsumptioninSEasia東南アジアのウイスキー人気は引き続き堅調であったものの、タイの情勢および経済不安、ベトナムでのプレミアムビールの台頭、シンガポールの飲食産業の低迷、またタイとインドネシアにおける違法業者の取り締まり強化などが響き、大規模市場での売上は軒並み落ち込んだ。

そんな中でも、注目すべきいくつかのトレンドが見られた。

まずはシングルモルトウイスキーが、販売構造関係の問題等で出遅れたマレーシアを除くと、東南アジア全域で人気だったことである。そして、熟成年数にこだわる同地域の消費者には、年数表記なしのウイスキーのウケはあまり良くなく、売上が伸び悩んだことも同地域共通の傾向としてあげられる。

またジャパニーズウイスキーの人気もあげられるが、同地域で一様に品薄状態が響いたため、売上が大きく飛躍することはなかった。

小規模市場のフィリピン、ミャンマー、ラオス、カンボジアといった国々では、輸入ウイスキーカテゴリーでジョニーウォーカーが首位に君臨、またこれらの国々では経済基盤は小さいながらも高い経済成長率を見せたという点で似た共通点があった。

タイ: 消費量の減少が続く

ジョニーウォーカーの売上は2014年から引き続き微減傾向に、また庶民に人気の低価格スコッチウイスキー100 Pipersや国産ウイスキーの売上減少傾向はもっと顕著だった。

シングルモルトウイスキーは伸び悩み、基盤も小規模のまま推移。ジャックダニエルは長年の人気を保ち、売上は引き続き微増した。

8月に実施予定の新憲法の可否を問う国民投票や、その結果次第では総選挙の実施も予定される情勢不安を抱えるタイでは、外国人観光客数は安定しているものの、一人あたりの消費額が大幅に減少している。
かつてのロシア人観光客に代り中国人観光客数が増加しているが、ロシア人ほどの高い消費力はないという。また国王の病状も国家不安の一つであり、仮に死去した場合は国中が喪に伏すことになるため、様々な経済活動に影響がでるものと思われる。

フィリピン : 価格戦略の影響で悲喜こもごも

ジョニーウォーカー ブラックラベルは、おそらくアジアで最安値(20米ドル以下)に設定されているフィリピンで売上を大きく伸ばし、またジョニーウォーカーブランド全体もこの恩恵を受け安定した売上を維持。一方、値下げを行わなかったシーバスリーガルやジャックダニエルは割高感が災いして、売上不振に陥った。

好景気、中流階級の年収アップ、また飲酒年齢層の世代交代も手伝って、かつて富裕層が好んだブランデーからウイスキーへシフトする傾向が強まっているフィリピンでは、国内のブランデー製造最大手のエンペラドール社がスコッチウイスキーのホワイト&マッカイ社を買収し、ウイスキー部門を強化するという動きも見られた。

人気の高まりを見せるシングルモルトウイスキーは、その市場規模はまだ小さいものの、2桁台の売上上昇率を叩き出した。

ミャンマー

輸入ウイスキーカテゴリーでは、ジョニーウォーカーブランドが富裕層からの絶大な人気を確保し、堅調を維持。同ブランドの中でも、ジョニーウォーカー レッドラベルは小売店で、ジョニーウォーカー ブラックラベルは飲食店でそれぞれ強い存在感を見せた。

インドネシア

プレミアムブレンデッドスコッチウイスキーの売上は、増税の影響と、飲食店や輸入品に対する規制強化で品薄状態に陥ったため、2桁台の下落を喫した。

シングルモルトウイスキーは基盤は小さいながらも引き続き活況、またお手頃価格のブレンデッドスコッチウイスキーはプレミアムクラスより売上を伸ばした。ジャックダニエルは在庫過多による値崩れとヤミ市場に対する政府の取り締まり強化のため伸び悩んだ。

シンガポール:ジャパニーズウイスキーの品薄が顕著に

景気後退で消費者の間に不安感が高まり消費が鈍化しているシンガポールでは、引き続き飲食産業が低迷したため、飲食店での酒類の売上は厳しい状況となった。一方、景気に左右されない富裕層をターゲットとした高級バーでは、超高級スコッチウイスキーの売上が堅調を維持。スコッチウイスキーで一番人気の12年ものは伸び悩んだ。

東南アジアで一様に品薄状態が続くジャパニーズウイスキーは、スコッチ、バーボン、アイリッシュウイスキーと互角に戦える実力がありながらも勝負できない状態におかれた。

マレーシア:付加価値税の影響を受ける

高級ブレンデッドウイスキーカテゴリーがわずかに売上を伸ばした一方で、手頃な価格帯のブレンデッドウイスキーは、同国通貨のリンギ安と2015年4月に導入された6%の付加価値税(VAT)の影響で大きく売上を下げた。

シングルモルトウイスキーの売れ行きは好調であったが、主要ブランドのザ・マッカランとグレンフィディックが販売構造の変化により失速、代わってザ・シングルトンやザ・グレンリベットが恩恵を受け売上を伸ばしている。

マレーシアにおいても熟成年数表記なしのウイスキーの取り扱い数は増えたが、やはり人気はいまいち。ジャックダニエルは販売網をマレーシア東部にも拡大したため売上が増加した。

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ベトナム

高級ブランド販売のための企業努力が奏功し、大手各社が高級スコッチウイスキーの売上を伸ばした。12年ものの部類ではシーバスリーガルが健闘しジョニーウォーカー ブラックラベルがシェアを減らした。18年ものの部類ではジーバスリーガルが最大シェアをゲット。ジャパニーズウイスキーは品薄が原因で残念な結果に終わった。

カンボジア

結婚式などの主要な消費機会ではジョニーウォーカー ブラックラベルが大人気。シーバスリーガルは売上減を喫したが、18年ものは小規模ながら堅調。成熟市場で好まれるシングルモルトウイスキーの存在感はまだ小さく、またバーボンウイスキーのジャックダニエルの売上の大半は免税店から上がっている。

ラオス

好景気の只中にあるラオスでは、ジョニーウォーカー ブラックラベルがウイスキーカテゴリーで圧倒的首位に君臨し、今後も売上を伸ばすものと予想されている。ラオスの輸入ウイスキー市場でのプレーヤーは、ジョニーウォーカーの他は、シーバスリーガル、ジャックダニエル、ヘネシーのみ。

出典:Mixed results for SE Asia whisky: IWSR Magazine April 2016

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