ヘネシーが首位、前回トップのジョニーウォーカーは31位に後退:スピリッツブランディング調査

IWSRスピリッツ「ブランド」ランキング2014( IWSR World Class Brands list)では、世界的なスピリッツブランド142銘柄の2014年の「ブランド力」のランキングを発表している。

2014年のランキングでは多少のサプライズがあったものの、ほとんどのメジャーブランドが2014年も業績を拡大し、実力を発揮したことが浮き彫りになっている。

ヘネシーブランドが2014年の首位の座に。僅差でジャックダニエルが2位に。

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IWSRスピリッツワールドクラスブランドランキング2014:スピリッツ部門TOP5

  • 1位 ヘネシー/Hennessy
  • 2位 ジャックダニエル/Jack Daniel’s
  • 3位 ジェムソン/Jameson
  • 4位 グレイグース/Grey Goose
  • 5位 ジンビーム/Jim Beam

Moët Hennessy USA社のCEO・Jim Clerkin氏はインタビュー(IWSRマガジン9月号のP17掲載)で、ヘネシーの米国での成功はフィリピン人ボクサー、マニー・パッキャオ 氏を起用した「Never Stop, Never Settle」というコマーシャルが奏功しするなど広告費を効果的、積極的に投じたことを要因の一つして挙げた。同氏はヘネシーブランドの米国での成功をもって以下のようにも述べた。

ヘネシーブランドは2014年米国において多くの消費者に支持された。そして我々は今後も成長するであろう。米国の消費者が高級アルコール飲料嗜好に回帰しているという現象が、我が社の成長を押し上げてくれた。もはや、コニャックと言えば、ヘネシー以外になにもないと言えるだろう。

mailmagazine-square1-300x300一方で、ヘネシーの主要市場の1つである中国は、いわゆる「顕示的消費」に対する当局の規制が足かせとなり販売数が低迷した。もう1つの主要市場であるロシアは、不景気に見舞われたため売上が落ちた。それでもヘネシーは2014年に全世界の販売総数520万ケースという目を見張る数字を叩き出し、800ドル弱/ケースという平均価格で販売量3%の成長率を見せた。

ジョニーウォーカーが空港免税店(トラベルリテール)部門トップ100ランキングで首位をキープし、スコッチカテゴリーの復活を牽引

この業績を大きく後押ししたのは米国市場でのパフォーマンスであり、2014年の販売数は250万ケースで、前年比10%弱増加した。南アフリカ、ナイジェリア、また旅行者向け販売店(免税店など)も高い成長率を見せた。これらの素晴らしいパフォーマンスで、2014年の中国における約21%の下落が相殺されている。

追随するジャックダニエル。テネシーハニー、テネシーファイアなどの革新的な商品で新たな市場の開拓に成功

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2014年のランキングで2位となったジャックダニエルは、米国におけるウイスキー業界の復活の波に乗っている。テネシーハニー(Tennessee Honey)やシナモンの香りをつけたテネシーファイア(Tennessee Fire)などの革新的な商品の成功で、従来の消費者以外、つまり女性や飲酒を始めたばかりの消費者を取り込んでいる。またジェントルマンジャック(Gentleman Jack) やシングルバレル(Single Barrel)といったハイエンドのラインアップの商品も加え、これらも成功している。

ジャックダニエル を製造販売するブラウンフォーマン社(Brown-Forman) は6月の2015会計年度決算発表で、テネシーハニー、ジェントルマンジャック、シングルバレル の3ブランドの全世界での合計販売数が200万ケースという大きな目標を達成したと発表した。一方親ブランドの売れ行きも好調だった。ブラウンフォーマン社CEOであるPaul Varga氏は以下のように述べた。

ジャックダニエルブラックレーベル(Jack Daniel’s Black Label)の2015会計年度の米国での販売数は過去最高を記録した。2016年には、ジャックダニエル 誕生150年 を迎えるが、その前年にこのような結果を出せたことはブラウンフォーマン社にとって素晴らしいプレゼントだ。

ジャックダニエルの米国以外の市場でのパフォーマンスも同様に目覚ましい。現在全世界の売上高のうち56%が米国以外から上がっているが、10年前は46%であった。イギリスは2010年に第2の100万ケース市場となり、フランスは2014年には前年比18%増加し、現在3位につけている。ジャックダニエルはまた、ポーランド、ロシア、メキシコ、ブラジル、南アフリカ、トルコなどの広範囲に渡る新興市場で、1桁台後半から2桁台の伸び率を見せている。成熟市場、新興市場ともに、今までの普及率を見た場合ジャックダニエルは市場での成長の伸びしろをいまだ期待できる。

ジェムソンもジャックダニエルに劣らずの国際的な成長の可能性は計り知れないほど大きい

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この度のブランドランキングで3位に入ったジェムソンも今後の成長が更に見込まれる条件が揃っている。この傾向はジェムソンに限らずその他の有名アイリッシュウイスキーにも同様なことが言える。
ジェムソンは2014年に米国、ロシア、南アフリカ、イギリスの4大主要市場において1桁台後半から2桁台の成長率を見せた。

ペルノ・リカール社/Pernod Ricard のCEO・Alex Ricard氏は2014年 のキャピタルマーケットデーでのプレゼンテーションでこのように意気込みを語った。1年後の今、Ricard氏が言ったことに矛盾がなかったことが分かる。

昨年米国で販売数が200万ケースを突破したジェムションは、米国市場における勢いのあるブランドの1つとなっている。ジェムソンはジャックダニエル、ジムビーム、クラウンローヤルなどの北米の大型ウイスキーブランドと比べると比較的小規模であるが、それゆえ成長の余地はまだまだあるということである。

2020年までにジェムソンは世界中で知られるブランドとなり、売上高も10億ユーロ(13億6,000万ドル)に達成するだろう。これは現在の売上高の2倍に相当する。

ジェムソンは、特にミレニアル世代(’80年代から’00年代初頭に生まれた世代)という若いグループの取り込みに成功している。Ricard氏はこのように語った。

アメリカ人は1つのブランドやカテゴリーに固執せず、複数のブランドをたしなむため、それらすべてのブランドが我々のライバルだ。重要なのは、我が社のブランドがお酒を飲む人のレパートリーから外れないということ。

 

ジョニーウォーカーの「歩く男」はつまずいてしまったのか?:スコッチウイスキーの全体的な低迷

20070615155032IWSRのワールドクラスブランドランキング は世界的なトレンドを究極的に反映している。新興市場の経済の低迷はスコッチカテゴリーに負の影響を及ぼした(2014年は1.3%のマイナス成長)。2013年のブランドランキングで1位であった世界的な大型ブランド、ジョニーウォーカー/Johnnie Walkerはランキングで急落している。また 40ブランドものスコッチウイスキーブランドが142の候補に入ったにもかかわらず、上位10位入りしたスコッチウイスキーは1つもなかった。アイリッシュウイスキーの米国での売上増加が少なからずスコッチウイスキー低迷の背景にあるかもしれない。

2013年には1位だったジョニーウォーカーの急落は特筆すべき事態である。近年のスピリッツ業界において最も大きな成功を収めたブランドの1つであるジョニーウォーカーは、’90年代後半にブランドが刷新され、2002年頃から急激な成長を見せてきた。そして2013年には、地理的な拡大とプレミアム感がうまく相まってジョニーウォーカーはランキングで1位にまで登りつめた。

新興市場でのつまずきを相殺できなかったジョニーウォーカー

ジョニーウォーカーは新興市場と歩調を合わせて成長してきたとも言える。2011年にはブラジルでの売上高が米国を抜きNo.1になっている。また売上上位10カ国のうち 7カ国が途上国である。ジョニーウォーカーはまた、旅行者向け販売において200万ケース以上を売り上げ、他のブランドの追随を許さなかった。しかし、2014年新興市場で、あの有名な「歩く男」はつまずいてしまった。

新興市場での販売量が前年比で1.7%減の1,880万ケースと落ち込んでしまった。ブラジルは前年比7%減、タイは前年比25%減、また米国、豪州、ポーランドでも売上減を喫した。一方メキシコ、南アフリカ、インドでは売上が増加したが、他の国での落ち込みを相殺できるレベルではなかった。このため、基準が極めて厳しいワールドクラスブランドのランキングにおいてジョニーウォーカーは、前年1 位から2014年は34位にまで急落している。

ディアジオ/Diageo社のCEOであるIvan Menezes氏は、7月に発表した年次決算報告で、同社はジョニーウォーカーの販売数を回復させるための策を講じていると以下のように述べた。

我が社最大のブランドであるジョニーウォーカーの販売数を伸ばすことは非常に重要である。そのため、これから次のステージに踏み出し、2015年9月には生きる喜びをたたえる、という史上最大のマーケティングキャンペーンを世界同時に開始する。スコッチウイスキーのプロモーション形態を書き換えるであろうこのキャンペーンを通じて、次世代の消費者も積極的に取り込んでいくつもりだ。

成長戦略ファクターと成功要因として重要なキーワード:地域戦略とミレニアル世代の取り込み

さて、スピリッツ業界にとって成長のために注力をしなければいけないいくつかの要素がこのワールドクラスブランドで明らかになった。ひとつは米国市場、新興市場などの地域戦略、そして新しくアルコールを飲み始める若年層、ミレニアル世代である。

米国市場が収益性と影響力において最重要であるということに疑いの余地はない。

米国市場が収益性と影響力において最重要であるということに疑いの余地はない。ブランドやトレンドはたびたび米国から始まり世界中に広がっている。米国にはイノベーションが生まれ育つ土壌があるのだ。2014年の米国の上位20位のブランドのうち10ブランドは、20年前には存在すらしていなかったことに驚かずにはいられない。このことはある意味で米国の消費者マインドを反映していると言える。

一方で新興市場戦略はそれぞれのブランドで温度差がでた。ヘネシーのように南アフリカ、ナイジェリアでの売上の伸びが低迷した中国での数値を相殺する場合もある一方で、ジョニーウォーカーやシーバスリーガルのように中国市場のマイナスをほかの市場で補うことが出来ず大きくブランドランキングを下げたメジャーブランドも ある。スピリッツのメジャーブランド成功のための戦略で高い評価を世界で得るためにはこれら新興市場での成功はもはや必須の課題とも言える。

あたらしい自分好みのブランドを開拓するミレニアル世代が市場において更に影響力を増す

今日の消費者、特にミレニアル世代と呼ばれる若者は、新しいものをトライしたい、新しい味やブランドを発見したい、全ての商品を試したいというマインドを持っている。さらに、ミレニアル世代は親世代が飲んでいたものではなく、自分で新しいブランドを開拓する。こうして、新世代が開拓したブランドの中から、国際的な存在感、規模、販売量の伸び率や価格決定力などで勝ち残る世界ブランドと言えるブランドが生まれていく。

続々と登場し、ランキングインしてきている新たなブランド存在感

fireball-whiskeySazerac社のFireballはランク外からいきなり10位にランクインしたが、このように急な伸びを見せたブランドはあまりないだろう。Fireballはシナモン風味の甘いウイスキーリキュールで、2014年の売上高は約420万ケースとされる。Fireballはショットでの飲み方がポピュラーであるため、Jägermeisterやテキーラなどの「ショット飲み」を好む消費者を多く引き込んだ。Fireballは前年より200万ケース多く売り上げて、米国のスピリッツ市場で一番の成長率を見せた。Sazerac社は「天国のような味、地獄のようにスパイシー」というFireballのキャッチフレーズを掲げ、バーなどの店舗内キャンペーンを展開してきた。そこでは、デジタルメディアを使い熱狂的なFireballファン同士を繋ぐという、一般消費者参加型の非常に革新的なマーケティングキャンペーンが展開された。アルコール度数が比較的低いということ(33%)と、その甘さが人気となって、男女問わずファンがついた。Fireballの世界的な販売数はまだまだ低いが、近年イギリスやその他多数の市場でも販売数を伸ばしている。

ciroc新規のブランドが続々と登場している現状を多国籍企業はどう対応していくベキなのか?たとえば、イノベーションに対するアプローチを変えてみてはどうだろうか? 無難に既存ブランドの拡張製品を作るのではなく、真の新商品を市場に投入することを目指すべきである。
たとえば、ディアジオ社は、全く新しいウォッカブランドCîrocやバーボンのBulleit(元Seagram社製品)などを発売し、多国籍企業が新商品を市場に出せるのだということを見せつけた。Cîrocは今年のランキングで7位にランクイン、またBulleitは米国において最も急成長しているバーボンの1つとなっている。

Cîrocにおいては、有名人とのタイアップがその人気に拍車をかけた。2007年にDiageo社とラップ歌手のP. Diddyが結んだCîrocのプロモーション契約によるPRキャンペーンの効果は絶大であった。また、有名人の商品PRへの関わり方を変えるよい例ともなった。
P. DiddyはDiageo社との間で、Cîrocの売上から上がる収益を折半し、また戦略計画に参画および計画の実行などに関与するという契約を結んだ。P. Diddyは商品の顔というだけなく、商品の販売戦略にまで参画したのだ。ラップ歌手P. DiddyによるPRがCîrocの成功を後押ししたことには疑いの余地がない。2007年から2008年にかけてCîrocの販売数は95,000ケースから330万ケースに急増し、その後も成長し続けたことを見れば、有名人を使った宣伝効果が絶大だったことが分かる。米国だけでCîrocはスーパープレミアムセグメントで他を大きく引き離し、2008年以降の年平均成長率は45%を誇る。

多国籍企業の業績は「あっぱれ」。世界的なメジャーブランドの時代はまだ終わっていない。

IWSRでは142のインターナショナルブランドの評価をランキング形式で行った。販売量、価格、そして伸び率で総合的に評価、それぞれのブランドの国際的な評価としては非常に厳密な分析をした。ランキングの上下、新しいブランドの勃興、新興市場でのドラマなどがあった。とはいえ、やはりスピリッツを販売する多国籍企業の業績は「あっぱれ」 と申し上げなければならない。

大手の動向、ディアジオ社、ペルノ・リカール社、そしてビームサントリー社と続く

ディアジオ社からは今年の「IWSRスピリッツワールドクラスブランドランキング」には、24のブランドがランクインし、そのうち2ブランドがトップ10 に入っている。ペルノ・リカール社は20ブランド、ビームサントリー社は12ブランド、バカルディ社9ブランド、カンパリ社とWilliam Grant & Sons社はそれぞれ8、Edrington社とLa Martiniquaise社とレミーコアントロー/Rémy Cointreau社はそれぞれ5ブランドがランクインしている。Roust社、LVMH社、Cuervo社、Distell社、Illva Saronno社もそれぞれ複数のブランドがランクインした。

カテゴリー別に見ると、スコッチとウォッカが一番多く、それぞれランキングに40ブランドと23ブランドが入った。次いでリキュールが23ブランド、ラムが18ブランド、ジンとテキーラがそれぞれ7ブランド、ビターズ/スピリッツアペリティフと米国ウイスキーがそれぞれ6ブランド、コニャック4ブランド、アイリッシュウイスキーが3ブランドであった。

出典: IWSR Magazine 9月号:World Class Brands feel US influenceを元にIWSR Japanが翻訳、編集
アナリスト:Alexander Smith
日本における編集責任者:前田静吾

IWSRのワールドクラスブランドの評価点算出の方法論

IWSRのワールドクラスブランドはIWSRの保有するデータを活用し複数の評価軸においてランキングをして、それらの総計点がそのブランドのもつブランドポイントとして総合ランキングのための評価点となる。3つの評価ポイントを用意しております。

  • Volume Score: 全世界での出荷量
  • Growth Score: 昨年に比較しての販売ケースの成長率
  • Per Case Score: 1ケースあたりの価格の高さ
  • Aggregate Total: ブランドの持つブランドポイント。Volume,Growth, Per Caseの合計ポイント

IWSRでは2014年のワールドクラスブランドのスピリッツ部門を算出するにあたり142のブランドを予め抽出している。これらの142のブランドは世界の主要3地域以上で販路をもち9リットルケースを2万箱以上販売しているという条件をクリアしているブランドである。
Volume、Growth、Per Caseそれぞれで 最も高い数値のブランドに142ポイントをつけ、もっとも低いブランドが1ポイントとなる。たとえば、2014年で最も成長率が高かったブランドはFireball Shot Cinammonであったが、この場合Fireball Shot CinammonはGrowth Scoreが142ポイントで142ブランドの中で最も高いポイントを得ることが出来る。

 

 

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