米国アルコール飲料業界の卸売業者の相次ぐ合併。卸の統合は業界にとり新たなメリットの可能性も?

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アメリカ卸業者の合従連衡が進む。大手6社が大手4社へ

IWSR Magazine4月号 by Alexander Smith] 最近アメリカではワイン&スピリッツの卸売業者の合併が相次ぎ、さながらビッグバンの様相を呈している。

サザン・ワイン&スピリッツ社は業界第4位のGlazer社を統合しさらに勢力を拡大、また業界第3位のCharmer Sunbelt社と第6位のWirtz Beverage社は2015年末に統合し、新たにBreakthru Beverage社として発足した。
このため、アメリカの大手ワイン&スピリッツ卸売業者数は6社から4社に減少した。

酒造メーカー、特に小規模メーカーは卸売業者の統合の動きを不安視している。

アメリカでは酒造メーカーはゲートキーパー的な存在である卸売業者を通さずに商品を売ることができない仕組みになっているのだが、卸売業者の数が少なくなればなるほど小規模メーカーの商品を取り扱う卸売業者が少なくなることになる。

すなわち商品が飲食店のメニューや小売店の棚に並ぶ機会がどんどん減ってしまうことになりかねないのだ。
現在全米のワイン&スピリッツ卸売市場の約60%のマーケットシェアが大手4社の手中にある。

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「クラフト」商品のトレンドが新たな商習慣の流れに?

ワイン、スピリッツ、ビールなどのブランドから次々と独自性のある「クラフト」商品が登場し、またアメリカの消費者からもこういった商品を求める声が高まっている。
ワイン&スピリッツの卸売業者の統合が進むことで、将来的には卸売の商習慣に新たな流れが生まれ可能性もある。

たとえば、大手卸売業者が従来は取り扱わなかった「クラフト」商品を専門に取り扱うニッチな卸売業者が続々と誕生している。大手小売業者はこういった商品の販売を手掛けたいと考え、小規模であっても信頼できる卸売業者を探しているのだ。

そして消費者にワクワクするような新商品を提供したいと考えるようになっている。

ただ忘れてはいけないのは、大手卸売業者が大きな成長が見込める「クラフト」分野に参入しないわけがなく、「クラフト」専門に扱う部門を立ち上げる大手業者も出始めている。
今回統合した前述の2社が規模をさらに拡大したら、残されたNational Distributing社とYoung’s Marketはどうなるか?

こう考えると、今後はこれら2社の統合も現実味を帯びてくる。

更なる、そして新しい合従連衡も?

今後もワイン&スピリッツの卸売における勢力図や商習慣は変化し続けるであろう。 ビールの卸売業者の中には、ビールだけでなくワインやスピリッツも扱う業者が出てきた。

結局のところクラフトビールを売るのも、「クラフト」性のあるワインやスピリッツを売るのも同じといったところであろう。そして将来的にはビールの卸売業者とワイン&スピリッツの卸売業者が統合する可能性だってあるかもしれない。

ワイン&スピリッツの卸売業者の統合には様々な利点がある。

アメリカでは小売店や飲食店は同州内にある卸売業者からのみ酒類を購入することが可能なため(例外あり)、例えば、サザン・ワイン&スピリッツ社が勢力をさらに広げ、全米の州に支店をオープンさせることになれば、酒造メーカー側は自社商品を全米で扱ってもらえるようになるという利点だ。

ワイン&スピリッツの卸売は単なる流通を超えたところにある。

というのも、卸売業者の腕が酒造メーカーの売上を左右するであろうし、メーカーのマーケティング戦略にも関わってくる。

アメリカの消費者、とりわけミレニアル世代の消費者は新し物好きであるがゆえ、卸売業者の流行やニーズに対する鋭い目利きは非常に重要である。卸売業者は統合することによって、さらにレベルアップした業者が登場すれば、業界全体にとってこの上ない利益となるだろう。

IWSR Magazine4月号からIWSR Japanにて翻訳出稿]

Alexander Smith/Director
アレックス•スミス/コーポレートダイレクター

アレックス•スミスは、スコットランド・エジンバラ大学卒業後、1988年に入社。
入社以降、IWSRがカバーする約130の国と地域の半分以上のリサーチを精力的に手がけている。日本にも数度訪問をしているが、現在の担当エリアは、バルト諸国、中東、インド、スリランカ。
マネジングディレクターを務めた1995年から2013年の間に事業規模を12倍に拡大させたる。
現在はコーポレートディレクターとして経営に携わると同時に自身がまだリサーチを行っていない約65カ国への訪問のための時間を増やしている。
Email: alastair@theiwsr.com

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